前回の記事「確率論の基礎(4)」で,-集合体は「観測」にも密接に関連したものであると言いました。
ここまでは,-集合体が与えられていると考えてきましたが,例えば,数理ファイナンスへの応用の場合を考えると,投資家の投資戦略は「現時点までの観測」(から得られる情報)に基づいた戦略を取ることが出来るはずです。
そこで,投資家が現時点で持っている情報を表すために「観測」から作られる-集合体を考えることが必要になります。
このような状況を考える際に必要となるのが生成された-集合体です。
以下で生成された-集合体を定義します。
をのすべての部分集合の集まりとし,をの部分集合族,すなわち,である部分集合の集まりとします。
ここで,を含む上で定義されるすべての-集合体の集まりを考えます。
この集まりは,がその集まりに入っているので空ではありません。
また,これらのすべての-集合体の積は,やはり-集合体になり,それはを含む最小の-集合体になります。この-集合体のことをによって生成される-集合体と呼び,と表記します。
要は,部分集合の集まりは-集合体になっていないかもしれないので,-集合体になるように必要十分な部分集合を加えて-集合体にしたものがであると考えるとよいです。